まずは自分から

敵か、それとも味方か。
私が攻撃すれば、敵になる。私がなんの恐れも抱かず、微笑してみせれば味方になる。

アラン

世界には８０億人もの人がいるという。当たり前だけど、色んな人がいる。
二人と同じ人がいないという事実、当たり前と言えばそれまでだけれど、私には奇跡としか言いようがないことのように思う。
十五年に及ぶパソコン講師時代、十代の多感な年頃の生徒達と接してきた。当然それぞれに個性があり、十数年の人生のそこに至るまでの背景も多種多様、思春期ならではの感情の浮き沈みもあるだろう。中には、自身のそれまでの経験から、先生という存在に警戒心を持っている子もいる。

私自身は講師という立場上、いつでもどんな時でも自分から笑顔で声をかけることを心掛けていた。きっと中には、私に好感を持っていない子もいるだろう。それでも、そんなことはもちろん関係なく、いつでもまずは自分から心を開いて笑顔で接していく。不思議なもので、少しずつ距離が縮まっていくのを感じるし、相手も少しずつ笑顔を返してくれるようになる。

その職場環境から人としての学びを得る機会に恵まれ、仕事以外の状況においても、スーパーやレストラン、日常生活のどのような場所での一期一会にも、その相手への敬意として笑顔で「お願いします」「ありがとうございます」を意識的に伝えるようにしている。

仏教でも、顔施（がんせ）とか和顔施（わげんせ・わがんせ）という言葉があるが、その言葉をまだ知らない頃、仕事上で出会った方から、私の表情に対してそのような評価をいただいた。意味を知らず調べたところ「いつもなごやかで穏やかな顔つきで人に接する行為」とのことで、洋の東西を問わず言われる真理なのだろう。
まずは自分から、いつでも笑顔でいられるように心掛けることは、相手の反応を望むまでもなく、深呼吸をするように、自分自身の心が穏やかな立ち位置に戻れるきっかけになるような気がする。笑顔で過ごせる今日という日に感謝を込めて。