森のオーケストラ

ずっとずっと昔からそこにある森

  • book00
  • book01
  • book02
  • book03
  • book04
  • book05
  • book06
  • book07
  • book08
  • book09
  • book10
  • book11
  • book12
  • book13
  • book14
  • book15
  • book16
  • book17

ずっとずっと昔からそこにある森。
その森のふもとに、5歳になるモリネちゃんは暮らしています。
モリネちゃんのおじいちゃんとおばあちゃん、 そのまたおじいちゃんとおばあちゃん、
きっとそのまたおじいちゃんとおばあちゃんも その森のふもとに暮らしていました。

変わらないもの?変わらないように見えるもの…?

モリネちゃんはお母さんと一緒に しんせきや友だちのお家にお出かけするときは
いつも「こんにちは、おじゃまします」とあいさつをします。
だから、モリネちゃんはいつもその森に入るときにも、
「こんにちは、おじゃまします」とあいさつをします。

言葉を音として出せている…?

「自然の音が聞こえている…?」

モリネちゃんが何歳のころからか、 もの心つく前からその森はモリネちゃんの友だちでした。
モリネちゃんが遊びにくると森のみんなも「こんにちは、いらっしゃい」と
木々の葉っぱをこすり合わす音
葉や実が落ちる音
動物たちが土を踏みしめる音
鳥のさえずりの音
川のせせらぎの音
森を吹き抜ける風の音で モリネちゃんのあいさつにこたえます。

自然の音が聞こえている…?

「自分の名前を、自分自身を気に入っている…?」

モリネちゃんの名前、「モ・リ・ネ」。
モリネちゃんは、大好きな森と同じ名前の「モリ」がつく 自分の名前をとても気に入っています。
お父さんとお母さんは、 「森(もり)」の「音(おと)」という漢字をつけて モリネちゃんの誕生を喜びました。
モリネちゃんは小さくて 自分の名前の漢字や意味はまだわかりませんが、
森のお友だちの言葉を、音を感じることができるのです。

自分の名前を、自分自身を気に入っている…?

「その一日のその瞬間と向き合えている…?」

モリネちゃんは来る日も来る日も、森に「こんにちは、おじゃまします」といって遊びに行きます。
春の日も、夏の日も、秋の日も、冬の日も。
晴れの日も、曇りの日も、雨の日も、雪の日も。
森のみんなは、「こんにちは、いらっしゃい」と その時々ですてきな森のオーケストラで音を返してくれます。
耳に入るその日その日の心地良い音と
目に入るその日その日の美しい色と
鼻に入るその日その日の濃い匂いと
口に入るその日その日の美味しい空気。
モリネちゃんはまだ小さいので、 その気持ちの良い感覚を「森大好き!」という気持ちで表現します。

その一日のその瞬間と向き合えている…?

「後先考えずにワクワクできている…?」

ある日、モリネちゃんは可愛い小さなリスを見かけました。
小さなリスの後ろ姿にワクワク「可愛い!どこに行くのだろう!!」

後先考えずにワクワクできている…?

「素直に助けを求めている…?」

「あれ?!どちらに戻ればいいのだろう??」
夢中でリスを追いかけていつもの森より奥まで来ていました。
モリネちゃんはぐるっと見回して、すぐ周りの森の木たちに聞きました。
「わたしはどちらに帰ればいいのかしら??」
すぐ周りの森の木たちは、 森全体に地面を通してモリネちゃんのことを聞いてくれます。
お家への戻り方を 葉っぱ をこすってカサカサ、木の実を落としてドサッ、
色々な音を鳴らして行く方向を案内してくれます。

素直に助けを求めている…?

「感謝の気持ちが芽生えている…?」

モリネちゃんはお家の近くの森にもどってきました。
いつもの森のお友だちは、「おかえり!」オーケストラでお出迎えです。
いつも以上にたくさんの音で、いつにもまして美しいハーモニーでモリネちゃんを迎えてくれます。
モリネちゃんは耳だけではなく体全体で、 森のお友だちの美しい音を、 やさしい気配を受け止めます。
「ただいま!みんなありがとう」
モリネちゃんはもっともっとみんなのことが、森のことが大好きになりました。

感謝の気持ちが芽生えている…?

エピローグ

モリネちゃんも他の多くの子どもと同じように、成長するにつれて新しい世界が広がっていきました。

新たな出会い。
それは人に限らず、知識や経験、情報なども。

人が成長するにつれて「当たり前のこと」となってしまうことが、
モリネちゃんは「なれっこ」にならずに、いつも純粋に驚いたり喜んだり。
モリネちゃんは、悩んだり困ったりしたときも、森に相談しながら成長していきました。

それはきっと、
モリネちゃん自身の心や内面と森や自然とが繋がっているということ。

モリネちゃんにとって森の存在はますます大きくなり続けています。