自分自身を知ること

欲しいものではなく、自分自身を手に入れなさい。

ヨハン・ゴットリープ・フィヒテ

ずっと以前、なんとなく生きていて、意思のない空虚な自分だった頃がある。
「自分がどうしたいか」という漠然とした問いどころか、日常的なこと、何を食べたいか、どこに行きたいか、そんなことすらもわからない状態で、自分というものがなかったような気がする。

エネルギーが縮小傾向で無気力で、とうとう身体的にも不調になり、まずは自分の好きなことをしようと考えたけれど、何が好きか、そんなことすらわからなくなっていた。
肉体が生きているというだけで、心は閉じていたような気がする。

途方に暮れる中で、何か現状を変えなければならないことだけは感じていたので、まずは自分自身に、心に向かって、何から何までひたすらに耳を傾け、自己と対話をしたように思う。
内観することで、自分自身と向き合い、自身の小さな小さな声を拾い上げ、一歩を踏み出すことから始めた。私にとっては、花や植物が最初の一歩のきっかけを作ってくれた。

好きなことを思い出し、好きなことをするようになり、夢中になる、時間を忘れるという感覚を思い出した。目に映る景色がモノクロからカラーになったかのように、生き生きと現実が動き出したように感じた。そこから一歩ずつエネルギーが拡大してきたように思う。

何よりも優先して、自分自身を知る、自分自身を手に入れることこそが、人生の目的なのではないだろうかと、大袈裟かもしれないけれど今は思う。当時はわからなかったけれど、自分自身の意思がなということは、肉体のみ、中身のないただの器で、それを本質的に自分と言えるのだろうかとさえ思う。

自分はどうしたいのか、その都度自身に問い、心の声を聞きながら日々を重ねてきた。その頃から四半世紀の時を経て、目の前の状況や自分自身を信頼できるようになった今、一歩引いてあるがままに「今在る」ことに奇跡や感謝を感じられるようになった。もがきながらも、向き合い続けた過去の自分自身に感謝を込めて。