思い込みという足かせ
海のほか何も見えない時に、陸地がないと考えるのは、
フランシス・ベーコン
決してすぐれた探検家ではない。
6、7年前まで、派遣でパソコン講師として勤務していた。
自分としては、ワークライフバランスも良く、新卒で経験したオフィスワークと比較して、変化のある日々も気に入っていて、十分満足していた。ただ、生徒達の成長を感じられる喜びの反面、十年も続けると自身の成長に対しての停滞感を感じなくもなかった。
それでも、勤務時間や待遇など、自分にとっては諸条件が合っていたし、派遣先からは評価していただき、自身の居場所を感じられる職場だと思い、日々を満足して過ごしていた。
ある年、同じ立場の新しい派遣さんが入ってきた。
私は勤務経験が長いので、彼女に私が得てきたノウハウを伝える。自分としては、何も特別なことはしていないけれど、彼女は、私の職場での振る舞いや言動を高く評価してくれた。事あるごとに、過大評価とも思える言葉を伝えてくれる。
そんな日々の中で、「ここにいるべき人ではない」「独立しても活躍できる人」というメッセージをもらう。自分としては、現状に満足しているし、そんなことは全く考えたこともなく、「そんな器ではない」と全否定していた。今思えば、それこそが自身の思い込みで、それが足かせとなり、自分自身で可能性を閉じていたのだとわかる。私は「決してすぐれた探検家ではなかった」、その場所から見える景色が全てだと思い込んでいた。彼女のおかげで、他の景色があることを知ったのかもしれない。
そのうちに新しい景色を見てみたいと、何もその先を決めたわけではなかったけれど、辞めることだけを決めた。そこからは不思議と、流れに身を任せるように出会いや経験に後押しされて、今に至る。
今は、数年前までと比較して、圧倒的に時間的にも金銭的にも自由があり、軽やかに感じている。
ここに至るまでには、自分のスキル以上の要望を受ける時もあり、寝食を忘れて必死に取り組む時期もあった。それでも、そんな時でも、出来るから与えられている、必ず出来ると、状況や自身を信じることができた。結果、より自分自身との信頼関係は増して今に至る。
誰もが自分自身で可能性を閉じずに、自身を信頼し、行動を起こせたとしたなら、新しい景色を見られるのではないだろうか。可能性を阻んでいたのは、いつだって自身の思い込みだったのだと、今ならわかる。
時間や経済に縛られない境遇になったのであれば、なおさら、純粋に自分自身が望むことや喜ぶことに、真摯に向き合って行動を積み重ねていきたい。「海のほか何も見えない時に、陸地がある」ことに気づかせてくれた貴重な出会いに感謝を込めて。
